自転車でのスマホ利用はダメ!
視認性悪化やイヤホン遮音性の実験結果をもとにプロが解説

2024年10月23日

自転車に乗って音楽を聴きながらスマホを操作するシンジくん

K-POPが大好きなシンジくん、今日も聞きながら自転車を・・・いいのか?

何をするにも一緒なスマホ。

歩きながら、食べながら、など、「ながらスマホ」で一日過ごしていませんか?

シンジ:みなさん、こんにちは、僕はスマホのことをもっと知りたいシンジくんです。

 

今日は、自転車の「ながらスマホ」について、やってはいけないこと、気をつけないといけないことなどを、KDDIの担当者に話を聞きました。

聞く人と、答える人。左:桑田、中:シンジくん、右:日野

[聞く人と、答える人]

左:桑田 卓哉

(KDDIプロダクト品質管理部 スマホ安全品質のプロ)

中:シンジくん

(スマホについて色々知りたい人)

右:日野 有子

(KDDIサステナビリティ推進部 ながらスマホの啓発のプロ)

桑田:シンジくんはスマホを操作しながら歩いたり、自転車や車の運転をしたり、色々な場面で「~をしながら」スマホを使っていないですか?

 

シンジ:うーん、やってしまっているかも。でもなんで?

 

桑田:スマホは便利で生活に溶け込んでいるけど、スマホの「ながら」は危ないことが実はいっぱいあるから気を付けてね、という話をします。

自転車に関する法律が厳しくなっています。

桑田:警察庁によると、車の交通事故は減っているのに、自転車の交通事故は増えています。

携帯電話使用等に起因する交通事故件数グラフ

桑田:警察庁では自転車の「ながら運転」の罰則強化を行うとしており、令和6年11月1日に道路交通法改正を行うとのことです。

自転車のスマホ罰則強化

※ 上記イラストは、警察庁の交通安全啓発リーフレットを元に作成しました。

桑田:・・・と、法律が強化されるということもありますが、今日は自転車の「ながらスマホ」がどれくらい危険なのか、という話をします。

「ながらスマホ」に関するKDDIの取り組み

桑田:今日は、「ながらスマホ」の啓蒙活動プロの日野さんをお呼びしました。今日はよろしくお願いします!

日野:「自転車安心・安全プロジェクト」として、自転車のながら運転をVRなどで体験できる教材を作成し、自治体や学校などと連携して、たくさんの方にリアルに体験いただくと共に、危険性や問題点を考えていただく機会を提供する活動をしています。よろしくお願いします。

VRを使った「自転車のヒヤリハット体験」の様子

VRを使った「自転車のヒヤリハット体験」の様子

桑田:最初に日野さんにお伺いしますが、自転車の「ながらスマホ」って、どれくらい危ないのでしょうか。

日野:愛知工科大学の小塚一宏名誉・特任教授に監修をお願いし、京都府、KDDI、au損保、UNN関西学生報道連盟 (京都大学、同志社大学、立命館大学、京都女子大学ほか)による実験を以前行いました。この時の様子は以下の動画で参照いただけます。

「ながらスマホ」運転の場合、運転に集中できていないイメージ

「ながらスマホ」運転の場合、しばしば視線がスマホに行き、運転に集中できていない。

桑田:どれくらい周りが見えているのでしょうか。

日野:この実験では、周りの歩行者を注視する時間が23%に減少したという結果が出ています。

自転車「ながら」運転で、周りの歩行者を注視する時間が23%に減少

日野:今日は、学習動画※1を使って、シンジくんに、自転車の「ながらスマホ」の危険性を勉強してもらいます。この動画では、「ながらスマホ」が原因で実際に起きた事故の事例紹介や、「ながらスマホ」の疑似体験ができます。

  1. 今回使用した学習動画は、自治体や学校単位でお貸ししています。問い合わせ先は本記事の最後を参照ください。

シンジ:よろしくお願いします!

日野:まずは、自転車「ながらスマホ」で、老夫婦の幸せと自分の人生を台無しにした事故の事例を紹介しますね。

「ながらスマホ」が原因となった事故の例

自転車「ながらスマホ」が元で、死亡事故の加害者となってしまった例

自転車「ながらスマホ」が元で、死亡事故の加害者となってしまった例

(コンテンツ動画では、ほかにもいくつかの事例を紹介しています)

日野:加害者の女性は、決して速いスピードで自転車を運転していたわけじゃないの。スマホや飲み物を持っての運転で、イヤホンも付けていた。自転車の運転に集中できてなかったのね。

シンジ:・・・。これはキツいです・・・。

日野:シンジくんは心当たりない?似たようなことをしていないかな?

シンジ:スマホ画面をずっと見ているわけじゃないよ!まわりも見ているし大丈夫だよ!

日野:本当に大丈夫かしら?じゃあ、この学習動画を使って試してみましょう!桑田さんも一緒にどうぞ。

「ながらスマホ」で周りがどれだけ見えなくなるか、の疑似体験

●体験内容:学習動画をつかい、スマホ操作をしながら自転車に乗ると、どれだけ周りが見えなくなるかを疑似体験する。

  1. スマホを操作(コンテンツとして準備されたメッセージツールを使用)しつつ、動画上に表示されたビックリマークマークの数を数える。
  2. 次に、メッセージツールの操作なしで動画を見て、表示されたビックリマークマークを数える。
桑田さんとシンジくんの体験中の様子

桑田さんとシンジくんの体験中の様子

日野:どうだった、シンジくん?

シンジ:スマホ操作しながらの時は、ビックリマークの見落としがいっぱいあったよ。

「操作なし」の時と比べて、見落とし率が32%だってさ。・・・桑田さんは?

桑田:見落とし率80%・・・。やばい・・・。

日野:最初に紹介した、愛知工科大学の小塚教授の実験データ「注視する時間が23%に減少」よりシンジくんはマシだったけど・・・今まで事故を起こしていないのはタマタマね。

桑田さんは・・・絶対「ながら」をやっちゃダメね。

桑田:・・・。

シンジ:よく分かりました。スマホを見ながら自転車に乗らないよ!

桑田:(気を取り直して)「スマホ見ながら」を止める、ってことは、「音楽を聞きながら」はOKかい?

シンジ:・・・ダメなの?

イヤホン使用で、周りの音がどれだけ聞こえなくなるかの実験

桑田:さっきの疑似体験は視覚の観点だけど、今度は私から、聴覚の観点で話をします。

耳からの情報も、自転車の安全運転ではすごく大事ですよ。

周囲の音を消すことができるノイズキャンセラー機能を持つイヤホンも多くなっていますし。

今回、「音楽を聞きながら」で、どれだけ周りの音が聞こえなくなるのか、実験してみます。

イヤホンはスマホとペアリングし、音楽を聞けるようにしてあります。

●実験:イヤホン(カナル型)を使うと、どれだけ聞こえなくなるか

実験に使用したイヤホン(カナル型)耳の穴にフィットする形状
  1. 「道路のノイズ音」の音源を、ダミーヘッドに向けてスピーカーから出力。
    車のタイヤとアスファルトの摩擦音。車が近づくにつれて変化。車に追い越される瞬間が分かる。
  2. 任意に選んだカナル型イヤホンをダミーヘッドに装着し、「道路のノイズ音」がどう聞こえるか、下記のパターンを比較考察する。

パターン①:音楽再生無しで、イヤホンのノイズキャンセラーON、またはOFF

パターン②:音楽再生ありで、イヤホンのノイズキャンセラーON、またはOFF

実験に使用したダミーヘッド

実験に使用したダミーヘッド

(人の形を模した音響測定用機材。耳の中にマイクが入っている)

●実験結果①:音楽再生「なし」での「イヤホンなし」「ノイズキャンセラーON」「OFF」の比較

音楽再生「なし」の周波数特性グラフ

(各周波数のピークのレベルをグラフ化)

シンジ:ノイズキャンセラーON、「道路のノイズ音」が、小さくてほとんど聞こえないよ!ノイズキャンセラーOFFも、「道路のノイズ音」が変な音になっていて、聞きとりにくいよ!

桑田:ノイズキャンセラーONの場合、20dB~30dBくらい、「道路のノイズ音」が小さくなっています。

シンジ:それってどれくらい違うの?

桑田:セミとキリギリスの鳴き声、くらい違います。

イヤホンなしの時とありの時の聞こえ方のイメージ

シンジ:あらまあ。

桑田:ノイズキャンセラーOFFの場合、低い音はそのままですが、高い音がすごく小さくなっています。今回使ったイヤホン特有の癖かもしれませんが。

シンジ:ノイズキャンセラーOFFは周囲の音をマイクから取り込むってことだったから、周りがよく聞こえて逆に安全なのかと思っていたよ!危ない、危ない・・・

●実験結果②:音楽再生「あり」での「イヤホンなし」「ノイズキャンセラーON」「OFF」の比較

音楽再生「あり」の周波数特性グラフ

桑田:今度は、イヤホンから音楽を流してみます。シンジくんの好きなK-POPで。

シンジ:ノイズキャンセラーONだと、やっぱり周りの音がぜんぜん聞こえないや。

でも、それより危ないと思ったのが、ノイズキャンセラーOFFの方だよ!

「道路のノイズ音」が変な風に聞こえて、その中に隠れちゃったK-POPを一生懸命聞こうとしちゃうから、結局周りの音が聞けなくなっちゃった。

・・・これはダメだ!「イヤホンしながら」は絶対しません!

※今回実験に使ったイヤホンでの結果です。ほかのイヤホンを使った場合、違う聞こえ方になる可能性があります。

桑田:今回の実験より「イヤホンの周りの音を取り込む機能」を使っても安全とは言えないことが分かりました。我々としては、つかうイヤホンの違いに関係なく、「イヤホンしながら」はダメだと思っています。

日野:片耳にしか付けてないから、耳をふさがないタイプ(オープンイヤー型/骨伝導型/イヤーカフ―形など)だから大丈夫、みたいに容易に考えるのも危険だと思います。

今回、私たちは、実験の結果の音を実際に聞いたからよくわかったけど、このホームページを見ている皆さんで実際に音を聞いてもらう手段はありますか、桑田さん。

桑田:まずは、こちらで視聴してみてください。

桑田:イヤホンによる聞こえ方の違いもあると思いますので、皆さんは、普段お使いのイヤホンをつかって以下の実験をしてみてください。やり方は簡単です。

簡単な実験方法/イヤホンをつかって、音楽を聞きながらテレビを見てください。

日野:やってみました!私のイヤホンも、ノイズキャンセラーONにすると、テレビで何を言っているかが全く聞き取れませんでした。ノイズキャンセラーOFFも危ないわ。

桑田:実際にイヤホン付けて自転車で走ってみて試すのは危険ですから止めてくださいね。

日野:今回、自転車の運転では、視覚だけでなく、聴覚もすごく大事だということが良く分かりました。

スマホを皆さまに提供させていただいているKDDIとして、これからも安全訴求をしっかり継続していきます。

シンジ:よくわかりました。これからは、「ながらスマホ」はしません!

桑田:ところで日野さん、さっきの動画コンテンツとかVRとかを希望する自治体とか学校とかの皆さんは、どうやって申し込めばいいのかしら?

日野:詳しくは以下をご覧になってください。よろしくお願いします!

桑田:参考までに、スマホの取扱説明書の抜粋は以下の通りです。みなさん、安全なスマホライフを!

スマートフォンの取扱説明書の抜粋イメージ

KDDI・ドコモ・ソフトバンク・楽天モバイルでは、MCPCと連携して、スマホを安全にご利用いただくための情報を発信しています。

文:KDDI プロダクト品質管理部/サステナビリティ推進部

動画、写真:KDDI プロダクト品質管理部/サステナビリティ推進部

イラスト、人形制作:KDDI プロダクト品質管理部