田中さんの思いは切実。ある種、携帯電話が一般的になった時代に青春を過ごす者たちにとっては避けて通れない問題かもしれません。現在28歳の彼が持ち込んだのは、2005〜2010年までのあいだに使っていた2台のガラケー。つまり15歳〜20歳までの思い出が詰まった2台です。普段必ず持ち歩き、学校生活とも日常とも切り離せなくなった世代の携帯電話には、まさに“おもいで”が全部詰まっています。「ハードディスクとクラウドに分散して保存されている写真をちゃんと整理しようと思って、2年前に着手したんです。そしたらどこをどう探しても、2006年から2010年のデータがごっそりないことに気づいたんです。どうやら昔のガラケーにしかないっぽくて」ちょうど高校生活の日常と修学旅行、さらには成人式までを網羅する時代。
「信じられないぐらいのショックで。1年前からこのイベントが近くに来るのを待っていたんです」
で、この表情。「ああ、うれしい……なんやこの動画?“先生トイレ!”“マリオラッパー”。わけわからんもんいっぱい入ってますね!へーーー」
しみじみ。
「自分で保存したり、友だちがメールで送ってくれた画像とかムービーとか、わけわからんものがいっぱい入ってます(笑)」
「あ、修学旅行!」
沖縄の伊江島で民泊した時の画像は待ち受けになっていました。
「いちばんうれしかったのは、高校時代の日常の写真が出てきたこと!今はもう潰れてしまった行きつけのパン屋とか。カツ丼1個3,500キロカロリーっていうデカ盛りの有名な食堂とか」
「ここにあったか」と小さな声で言ったのはガンプラ。中学高校時代にせっせと作ったものの「写真で残すから心残りはない!」と自らに言い聞かせ、アーカイブ化して全部処分したガンダムのプラモデルたち。
失われたアーカイブがおおよそ10年ぶりに蘇ったとのこと。