今年、77歳の喜寿を迎える松下さんは、滋賀県生まれ。
現役時代は転勤が多く、全国様々な街で働いてきたそう。そんななか、東京で理想の女性と出会い、家族となったのが32年前。それから“松下家”として日本各地を一緒に移動しながら仕事に勤しみました。「61歳で私は定年退職したんですけど、その時の勤務地が札幌だったんです。カミさんの生まれ故郷だったので、退職のタイミングにこの街に居を構えました。すでに子どもたちも独立して東京で暮らしていて、定年後は仕事ではなくプライベートで日本のあちこちに旅しようとカミさんと話していたんですけど……」奥様は13年前、60歳の若さで亡くなってしまったといいます。「妻が病に臥せて2カ月の入院の末に亡くなったんですが、その時の携帯電話を再起動させたくてきたんです」
再起動したケータイには、奥様とのメールのやり取りが残っていました。
そして、まだ元気だったころの奥様の写真をその場でプリントアウト。
「妻の年金の口座をつくって、これからは旅行三昧だぞって言ってたんですけどね(笑)。でも妻の死後、東京に勤めていた子どもたちも札幌への転勤願いを出して、今は近くに住んでくれています。……私は自分の身のまわりのことはちゃんと自分ひとりでできますが、でも、みんながそうして私のことを考えてくれてると思うと、ありがたいですよね。妻もきっと安心してくれていると思います」