再起動したケータイを見てはキャッキャウフフと女子会状態の女性3人。
「あー、ポエムみたいな直筆の待ち受けやってたねー」(姉)
「“絶対ムリ”なんて言った瞬間すべては終わる!みたいな熱いメッセージ書いてたよね!」(妹)「この写真、なんかパパ超痩せてない?」(母)
「あ、これ、エレクトーンの発表会!」(妹)
「エヴァだよね、エヴァ!」(姉)
発表会で「残酷な天使のテーゼ」を弾くために、綾波レイのコスプレをして臨んだ小学校6年生当時の妹・優花さん。3人が持ち込んだのは、10年ほど前のケータイ。盛り上がってはいましたが、本当に見たかったのは亡くなってしまったおばあちゃんの写真。とくに母方のおばあちゃんは、二世帯住宅で長らく同居。1階に暮らしていたので、「下のおばあちゃん」と呼んで姉妹2人ともとても懐いていたそう。ほどなく、父方のおじいちゃんとおばあちゃんの画像は無事に復活。
3人分のケータイを3人でつぶさにチェックしても、母方のおばあちゃんの姿は見つけることができませんでした。「まあ、でも楽しかったからいいよね」という雰囲気になりつつあった時、妹の優花さんがハッと息を飲みました。「伝言メモがある!」はたして、お母さんのケータイには同居していたおばあちゃんからの留守番電話の伝言メモが3つ残っていたのでした。うち2つは苦しそうな息づかいの向こうから「至急きてください」という内容を伝えるメッセージ。
もうひとつは打って変わって、クルマのナンバーについて言及する元気な声。次々とケータイを受け渡しながら、おばあちゃんの声を聞く3人の目にみるみるうちに涙があふれます。
2人の娘たちの前で、母・真由美さんは声を震わせました。
「母はレビー小体のアルツハイマーだったんです。残っている伝言メモは半ば幻覚を見ながら話している内容でしたが、それでも久しぶりに聞いた声だったので、とても懐かしかった。会いたい。会いたいです!」
大盛り上がりの女子会から始まり、不意のおばあちゃんの声に涙し、満面の笑顔に終わった笹谷さん一家の再起動なのでした。