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episode 63

ミツヒデさんのいちばん好きだった写真

アケミさんが見つめているのは、再起動したケータイから復活したご主人の写真。「この写真が大好きだったんです。今日は絶対これを見たいと思っていたから、本当にうれしい!」11年間添い遂げた夫・ミツヒデさんは、2年前、51歳の若さで亡くなりました。闘病もなく、突然病に倒れたのです。ゲームメーカーにお勤めで、いわゆる「宴会部長」キャラだったそう。「家でもずーっとくだらないことを言い続けていました。それをずーっと右から左へ受け流し続ける私のことを“ムーディーアケアケ”って呼んでて。……ね?くだらないでしょ(笑)」ミツヒデさんは写真があまり好きではなかったそう。旅行先でも「思い出は、写真じゃなくて心に残そう!」と、なかなか写真を撮りませんでした。だから、普段の写真はすごく貴重。

「数少ない夫の写真のなかでも、大好きな1枚が白いニットを着て撮ったもの。2006年の12月25日に恵比寿の喫茶店で撮った写真です。遺影は絶対コレだよね!なんて思ってたんですけど、まさか本当に、こんなに早く亡くなるなんて思ってもみなかった……」

年も日付までもすぐに言えるほど、この写真が大好きだったそう。どのケータイで撮ったかも覚えていて、だからこそ電源が入らないことが悲しくて仕方ありませんでした。「場の空気を見て盛り上げ役を買って出て、みんなを喜ばせたくて、私のことも喜ばせてくれて、サプライズが大好きで」アケミさんは目を真っ赤にしながら、ミツヒデさんのことを語ってくれました。広島生まれの熱狂的カープファンで、2人の馴れ初めは、ある選手の話題で意気投合したこと。一切キッチンには立たないのに、お好み焼きだけは腕をふるったこと。

ミツヒデさんのお好み焼きはきっとおいしかったでしょうね、と声をかけると、泣きながらアケミさん曰く「あ、それはフツー(笑)」。

 

おふたりのよい関係が今でも続いているような、そんな気がしました。

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