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episode 69

娘と2人で生きていくことを決めた、あのころ

たそさんは来年、成人式を迎える娘さんに、当時の写真を見せてあげようと来場されました。こちらの青いケータイは2006年のもの。たそさんが娘さんを連れて家を出て、独立することを決心した時期に使っていたケータイです。

はたして、ケータイ2台は無事再起動!

「こういう画面でしたねえ……」「娘が白衣着てる!キッザニアだ!」「タイムカプセル開けてるみたいですね。なんかもう、イヤな汗が出てきました」

 

写真やメールを見るたびに感情をグラグラ揺さぶられている模様。

 

たそさん、泣いて笑って悲鳴を上げます。

幼稚園時代の水ぼうそうに伏せる娘さんの写真が出てくると。

「いまはいつもニコニコしているから、こんな病んでるところすごく珍しい!……あ、音声メモも聞けるんですね!」

母ひとり娘ひとりで暮らしはじめ、仕事で帰りが遅くなった日の留守電が残されていました。「帰るのが遅いから心配してます。またあとで電話ください」という、少しくぐもった娘さんの声。

幼いころの娘さんの声を聞き、しみじみと「再生中」というディスプレイを眺めていたたそさんは、深く大きく息をつきました。

 

「はーーーーーーーー。大きくなったなあ」

 

たそさんが関わっているのと同じ保育系の仕事に進むことを考えている娘さんとは、今もたくさん話をするそう。でも、2人で生きていこうと決意したころの、娘さんの少し切なくも必死な声はケータイがよみがえったからこそ、聞けたもの。

 

「長生きするもんですね」

 

涙を拭って、たそさんはニッコリと微笑みました。

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